CINERAMA    - DISCOGRAPHY -
studio albums >> | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 || comp. | BBC | live album | single | dvd |
TORINO
TONE CD 011

Amazon.co.jp アソシエイト
Torino [U.S.盤]

Amazon.co.jp アソシエイト
トリノ[日本盤]

Amazon.co.uk
TORINO [U.K.盤]

TORINO

FORMAT: CD ALBUM (3rd studio album)
RELEASE DATE: July 1st, 2002
LABEL:
Scopitones (U.K.),
Manifesto (U.S.- released July 2nd, 2002)
P-Vine (Japan- PCD-23315; released October 25th, 2002)
CATALOGUE No.:
CD- TONE CD 011
Vinyl(2LP) - TONE 011(released on April 18th, 2015)*Record Store Day exclusive
TRACK LISTING:
1. And When She Was Bad
2. Two Girls
3. Estrella
4. Cat Girl Tights
5. Airborne
6. Quick, Before It Melts [extended version]
7. Tie Me Up
8. Careless
9. Close Up
10. Starry Eyed
11. Get Up And Go
12. Get Smart
13. Health And Efficiency

PERSONNEL:
All songs written by Gedge / Cleave except 3 & 11, which were written by Gedge and 7, which was eritten by Gedge / de Castro.
Performed by Cinerama; David Gedge - guitar and singing, Sally Murrell - keyboards and backing vocals, Simon Cleave - guitar, Terry de Castro - bass and backing vocals, Kari Paavola - drums.
With the assistance of: Allen Samuel - violin and viola, Rachel Davies - violin, Terry Whipple - viola, Abigail Trundle - cello, Rachel Didcock - cello, Ian Williams - trumpet, Christopher Hortin - french horn, Duncan Bridgeman - flute, Mat Pharson - bongos.

Produced by David Gedge, Dare Mason, Simon Cleave and Steve Albini.
Recorded by Steve Albini and Dare Mason at Electrical Audio (Chicago), Intimate (London), Parr Street(Liverpool) and The VIP Lounge (Penzance).
Mixed by Dare Mason. String arranged by David Gedge except Airbone (Arranged by Gedge / Cleave).
Mastered by Guy Davis at Hiltongrove.
Sleeve Design by www.egelnickandwebb.com.
 およそ1年9ヶ月ぶりとなる3rd Albumは前作『DISCO VOLANTE』以降のライヴでのパーマネント・メンバー5人 (CINERAMAスタート時のDavid Gedge、Sally Murrellの二人にTWP時代から引き続きギターのSimon Cleave、LA出身の女性ベーシストTerry de Castro、そしてあのSimon Smithを彷彿とさせるパワフルなプレイもこなすシュアーなドラミングでこの時期のCINERAMAにとって欠かせないメンバーとなったフィンランド出身のドラマーKari Paavola)になってからのフル・アルバムはこれが初めてとあってか、力漲るヴォルテージとグルーヴ、確かなバンド・アンサンブルに裏打ちされたサウンドとクリアーなヴォーカリゼーションが圧巻の1枚に仕上がった。前作『DISCO VOLANTE』同様シカゴのSteve AlbiniのElectrical Audioスタジオで基本となるバンド・パートの録音を経て、英国に戻りDare Masonの手によりコーンウォールのPenzanceに新設された彼のスタジオVIP LoungeやTWP時代にあの"The Hit Parade"シリーズでも使用した事があるリヴァプールのParr Street(Coldplayの大ヒットした2nd Album『A Rush of Blood to the Head』も一部ここで制作されている。余談だが、デビュー作の『Parachutes』にはTWPの『Geroge Best』と『Bizarro』で仕事をしたChris Allisonもプロデューサーでクレジットされている)などでストリングス/オーケストレーション、ヴォーカル・パートの追加録音とミックスダウンが行われているが、同じ制作体制で臨み、ほぼ同じ製作工程を経ながらもライヴでのCINERAMAを容易に想像させるダイナミックなギター・バンド・サウンドがより前面に打ち出されているのが特色(有り体な言い方を許して頂けるなら、サウンド的なパワー・バランスがより“スティーヴ・アルビニ寄りになった”とも言える)。前作でのスタジオ・アルバム然とした端正な雰囲気をもたらしていたとも言えるオーケストレーションの要素さえもが荒々しいギター・アンサンブルとパワフルなドラミング(この時代から新生TWP始動時の『TAKE FOUNTAIN』まで担当するKari Paavolaのプレイがとにかく御機嫌だ)を聴かせるロック・コンボの演奏と真っ正面から拮抗し、もはや他の類似例が思い出せないハード・ドライヴィング・サウンドを形成。CINERAMAのキャリアで培われてきたアレンジャーとしてのデイヴィッド・ゲッジの才覚と力量もフルに発揮された感がある。

 収録曲全13曲中DavidとギターのSimon Cleaveとの共作が大多数の10曲を占め、Simonは今回プロデューサーとしても他の3名(David, Dare Mason, Steve Albini)と共に名を連ねており(1曲#5でDavidと共にストリング・アレンジも担当)、卓越したギター・プレイだけではないこの音楽的なパートナーの存在感が改めてクローズ・アップされる事になった。またベースのTerry de Castroが今回初めて1曲#7で共作者としてクレジットされている。
 収録曲には先行シングルの2曲...大曲"Health & Efficiency"、"Quick, Before It Melts"に加えライヴでの定番曲、2001年4月のシングル"Superman"のカップリングだった#10"Starry Eyed"を「B面に埋もれさせておくより、もっと多くのオーディエンスに広めたい」という意向からアルバム収録曲へと“昇格”させている。発売当時からA面曲よりも人気を集めていたこのソリッドな1曲もようやく定位置を得た感触である。やはりライヴでTWP時代のレパートリーを解禁したこの2年間のツアー・サーキットの影響は予想以上のもので、デイヴィッドが認めている通り、作る楽曲そのものが過去の楽曲に触発される様にTWP的なエッヂを感じさせるアプローチを取ったのはこういった既発曲や#2"Two Girls"、シングル・カットもされた#8"Careless"に明らかで、これらが主軸を成す“ギター・ロック・アルバム”的な趣の中で弦楽四重奏をバックに歌われる緊迫感に痺れる#5"Airborne"(Elvis Costello&Brodsky Quartetの共演作を思い出させるこの曲には誰もが驚くに違いない)、かつて友人のDJ故John Peelが“daughter of death=死の娘”と形容したストリングス・アレンジに思わず息を飲むミステリアスな#4"Cat Girl Tights"が絡み合い、この静と動のコントラスト、緩急付けた構成がいつになくエモーショナルなメロディーとも相まって大きなうねりを生み出していく。アルバム全体を通して聴いた時、このうねりの中に飲み込まれてそのままどこか心地よいテンションを持続したまま終曲の"Health & Efficiency"で一気に解き放たれる、そんな感覚はデイヴィッド・ゲッジが関わった他の作品では味わえないもので、これこそが『DISCO VOLANTE』で到達出来なかった大きなポイントであると思う。
 歌詞のテーマは以前から伝えられていた様に性的な関係を歌ったコンセプチュアルなもの。S&M的な隠喩が用いられた#2"Two Girls"や#7"Tie Me Up"、シングル曲"Quick, Before It Melts"に見られる隠微で(=卑猥では無い)セクシャルな描写表現は本作に通底するトーンとなっているが、これまで以上に官能性豊かなDavidのストーリーテラーぶりも遺憾なく発揮されている。

 後の新生TWPの核となる4人が揃って作られたアルバムという事もあり、本作『TORINO』を約3年後に続く新生TWP名義の『TAKE FOUNTAIN』への大きな布石として聴く事も可能だし実際そうなのだが、本作からのシングルを含めた一連のジャケットのアート・ワークで顕されている、太陽の光が雲の畝と畝の間から指す様な仄かに明るさを湛えたムードは、この後デイヴィッドに訪れるプライベートでの別れが創作上(殊詞作面で)大きく影響する事になる『TAKE FOUNTAIN』から派生したカタログのアート・ワークにある、くすんだセピア色の風景写真に象徴されるどこか沈着した、感極まってしまう切なさを感じさせる作品の雰囲気とはあまりに対照的。季節の推移で言えば初秋から冬、旧TWPで言えば『Bizarro』と『Seamonsters』との関係(こういった過去作品との比較は当事者であるデイヴィッドには嫌がられるだろうが)に実によく似ていると思うのだが。

 なお米Manifestoでは発売に合わせて1曲入りのプロモCDをラジオ局に配布。日本では本国での発売から遅れる事ほぼ4ヶ月、ボーナストラック3曲("Health & Efficiency"から"Diamonds are Forever"のカヴァー、"Quick, Before It Melts"から"Ears [Acoustic Version]"、"Careless"から"Sparkle Lipstick")入り仕様での日本盤が発売されたが、日本語ライナーは名前の誤表記、事実誤認が目立つまたもや閉口する内容で、悪しき伝統はここでも繰り返される事になった。

 なお、2015年4月にはRecord Store Dayの限定リリースとして2枚組重量盤LP仕様で初アナログ化。ボーナス・トラックとして、コンピレーション・アルバム『Seven Wonders of the World』で初CD化された2009年10月17日北米テキサス州アントニオのFM局KRTUの3時間特番で披露されたDavid GedgeとTerry de Castroによるデュオ編成での貴重なレディオ・セッション6曲が初ヴァイナル盤化されることにもなった。
<<--- previous release "Quick, Before It Melts"next release "Careless"--->>
| top |