CINERAMA    - DISCOGRAPHY -
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Disco Volante
TONE CD 004

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DISCO VOLANTE
[U.S.盤]

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DISCO VOLANTE [Vinyl]

DISCO VOLANTE

FORMAT: CD & LP ALBUM (2nd Album)
RELEASE DATE: Sep. 18th, 2000
LABEL:
Scopitones (U.K.),
Manifesto (U.S.)
CATALOGUE No.:
CD- TONE CD 004
LP- TONE 004

TRACK LISTING:
1. 146 Degrees
2. Lollobrigida
3. Your Charms
4. Heels
5. Unzip
6. Apres Ski
7. Superman
8. Because I'm Beautiful
9. Let's Pretend
10. Wow [Extended Version]
11. Your Time Starts Now

PERSONNEL:
All songs written by Gedge except 1, 6, & 11 which were written by Gedge / Cleave. Performed by Cinerama; David Gedge - Singing, Guitar, Sally Murrell - Singing, Keyboards, Simon Cleave - Guitar, Terry de Castro - Bass, Backing vocals, Simon Pearson - Drums.
With the assistance of: Philip Robinson - Flute, Keyboards, Backing Vocals, Abigail Trundle - Cello, Rachel Davies - Violin, Adrew Blick - Trumpet, Jon Boswell - French Horn, Karen Cleave - Accordion, Paul Mertens - Flute on "Wow".
Produced by David Gedge, Dare Mason and Steve Albini.
Group recorded by Steve Albini at Electrical Audio, Chicago.
Overdubs recorded by Dare Mason at Oaklands Groove,London.
Mixed by Dare Mason at Intimate, London.
Mastered by Guy Davis at Hiltongrove, London.
Sleeve Design: Andrew Swainson at Cactus.
「『VA VA VOOM』を今振り返ってみれば、僕が成し遂げたかったレベルには達しなかったんだよね。だからもう一度やってみたいと思った。それが『DISCO VOLANTE』を貫くエモーションになっている。『VA VA VOOM』ではとにかくザ・ウェディング・プレゼントのサウンドから離れるのに必死で、ちょっとアコースティック寄りになってしまった。当初はループを使って、全ての音をマシンで同期させるのに興味があったから、その方向で進行してたんだけど、本物のドラマーを使い始めたら音楽が生命を宿して、以前よりサウンドが数段良くなったんだよね。だから『DISCO VOLANTE』では明確に生身の人間の演奏を念頭に置いてに全てのパートを書き始めたんだ。確かにいくつか同期している部分もあるけど、それも大部分はミュージシャンによる演奏だし。別にもう二度とザ・ウェディング・プレゼント的な音楽をやりたくない、という事じゃないから、それら2つの要素をこのレコードにとけ込ませてみたんだよ。」(デイヴィッド・ゲッジ談/2001年2月SOUND ON SOUND誌)


満を持して送り出されたおよそ2年ぶり2作目のアルバム。1st『VA VA VOOM』と比較すると派手さや人懐こさには欠けるが、曲の配置や曲間までもが周到に計算された全体の整合感と完成度の高さは前作を遙かに凌ぐ。外部から様々なゲストを迎えてDavid Gedgeという自作自演家のソロ・プロジェクト、という性格を強調していた『VA VA VOOM』に対し、雄弁なバンド・サウンドに支えられた本作は幾多のステージを重ねてきた5人組の新たなバンドCINERAMAのデビュー作と呼んでもいい程。ライヴバンドとしてのCINERAMAのグルーヴが丁寧に記録されながらも、作家性は今まで以上に感じられる楽曲があり、Davidのアレンジメント面での成長の跡が見られるホーンやストリングス・アレンジ(Davidが敬愛するエンニオ・モリコーネからの影響の大きさがより明確になった)が全体を引き締める。Weddoes全史で生み出されたあらゆる作品はもちろんCINERAMAスタート時の肩の力が抜けたポップなスタイルとも異なる、圧倒的なオリジナリティーがここに確立されている。
シカゴのSteve Albini所有のElectrical Audioスタジオで基本となるバンド録音、ロンドンのDare Masonによってストリングスとブラスセクションなどの追加録音とミックスダウン、という布陣での製作体制がここで整った事も重要なポイントだ。重厚なボトム音と“部屋鳴り”の特異な響きはいかにもアルビニ印の純アナログ・エンジニアリングの賜物。そこにデジタル機材を駆使しハードディスク・レコーディングにも精通する今様のエンジニアであるデア・メイソンのオーヴァーダブ作業とミキシングを加えた事で、本作で聴かれる奇妙にバランスが保たれたユニークなサウンド・フォルムが完成を見ているが、全く性格の異なる両エンジニアの手腕を要所要所で配していったこのハイブリッド・プロジェクトにDavidは相当な手応えを得た様で、同じ布陣でもう1枚アルバムが作られる事になったのは御存知の通り。
一聴してわかる変化はそれだけではない。後にDavid自身の発言からもわかった事だが、本作に収録された楽曲は予め5人のロック・コンボと生身のストリングス/ブラス・プレイヤーで演奏される事を予期して書かれたというもので、かつて懸念としていた“The Wedding Present的なスタイルからの脱却”さえも念頭に置かず、ただ己のモチベーションの赴くままに書き上げていった、という事なのだが、結果的にTWPで発表してきたものともCINERAMA開始時のものとも異なる、この時点でのCINERAMAのバンド・スタイルを反映した新たな路線が生まれたのは非常に興味深い。しかしメンバーチェンジを経た(新たに素晴らしくパワフルなドラマーKari Paavolaが加入し、翌年の“TWPナンバー封印解除”への布石の1つにもなっている)本作後のロング・ツアーでさらにラウドにリフが強調され、アグレッシヴなギター・バンド然とした楽曲へと変貌を遂げていく作品の行く末を知ってしまった今となっては、ここで聴くことが出来るスタジオ・テイクは端正すぎて些か物足りなさを覚えるのも確か。2002年になって通販限定で発売された廉価版のライヴCD『LIVE IN LOS ANGELES』はまさにこの『DISCO VOLANTE』直後のU.S.ツアーから録られているのでぜひ合わせて体験して頂きたい。
歌詞についても、さらに物語性に富み、ウィットの効いたダイアローグが盛り込まれた(時にいびつで官能的な)ラブ・ストーリーが展開されているのに気付くだろう。散文的な"Lollobrigida"、"Superman"のロマンティックな戯曲と"Apres Ski"の様な意味深なソープ・オペラも同居しているあたりに、この作詞家の面白みを見出すことは決して難しくはない。そのストーリーを綴るDavidのヴォーカリゼーションの成長ぶりには隔世の感さえある。かつてのTWP作品で恨めしげにふられ男の情けない独白を唸っていた男が、ここまで表情豊かで艶やかな響きのある歌とストーリーを聞かせる様になるとは、全く嬉しい誤算ではないか。
何はともあれ、ついにTWPの呪縛から逃れ一切のこだわりを捨てたDavid Gedgeが渾身の力で作り上げた名作である事は間違いない。本作をものにした自信はDavidとCINERAMAたちの活動をさらに精力的に推し進める事となり、もはやこのバンドがDavidにとって“TWP休止中の間の腰掛け的なステージである”という我々の当初の認識を改めねばならなくなるのであった。そう、このアルバムを持ってTWPの歴史は完全に過去のものとなったのだ。
なお、アルバム・タイトルはDavidが大ファンの映画007シリーズの第4作目「サンダーボール大作戦(Thunderball)」に登場するスペクターNo.2のラルゴが乗っているボートの名前に由来。限定プレスのアナログ盤は重量ヴァイナル仕様。
【関連文章】
デイヴィッド・ゲッジ、デア・メーソン、スティーヴ・アルビニが語った『DISCO VOLANTE』制作秘話(2002/1/11当サイトINTERVIEWS掲載記事)
【歌詞・対訳】
Disco Volante全曲歌詞・対訳(別ウインドウで開きます)
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