DISCOGRAPHY [THE WEDDING PRESENT (I) 1985〜1997]
  >> TWP (I) DISCOGRAPHY >> STUDIO ALBUM (スタジオ・アルバム) >>
Watusi


Amazon.co.jp アソシエイト
expanded edition (3CD+DVD)

Amazon.co.uk
Watusi


Track Listing:
1. So Long Baby
2. Click Click
3. Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah
4. Let Him Have It
5. Gazebo
6. Shake It
7. Spangle
8. It's A Gas
9. Swimming Pools, Movie Stars
10. Big Rat
11. Catwoman
12. Hot Pants

side-A: 1-6
side-B: 7-12
Watusi (12th September 1994)

U.K.&U.S. Island (Out of print)
LP- ILPS 8014/524 044-1 /
CD- CID 8014/524 044-2 /
MC- ICT 8014/524 044-1

Japan Mercury
CD- PHCR-1776 (Out of print)
(released on Jan. 25th, 1995)

Expanded Edition (E.U.) Edsel Records / Demon Music
3CD+1DVD - EDSJ 9008 (27th October, 2014)

Personnel:
David Lewis Gedge (vo.&g.), Paul Dorrington (g.), Darren Belk (b., Lead vocal on #6), Simon Smith (dr.), aditional musicians:Carrie Akre(vo. on #5&8), Heather Lewis (vo. on #2&9), Greg Powers (trombone on #10) Produced by Steve Fisk


 蜜月関係の続いていたRCAからアメリカのISLANDに移籍、'94年9月にリリースされたスタジオ・アルバムとしては4作目(全英アルバムズ・チャート最高位47位)。作詞作曲のクレジットがそれまでの"David Gedge"一人のものからバンド全員の連名に(これは唯一のオリジナル・メンバーとなってしまったデイヴィッドがバンドとしての求心力を取り戻そうという意思の表れという訳ではなく、個々のメンバーの出版社契約の都合であったようだ)。アルバム・ジャケットは抽象的なモチーフから具体的なものへ、色調もモノ・トーン/アース・カラー調からカラフルでポップなものへ。またDavid以外のメンバーによるリード・ヴォーカル曲が初登場するなど、明らかな変化を感じさせた作品で、実際に内容の方もそれまでのギター・サウンド重視のアレンジからホーンやキーボード類を多用して色彩感を強調。その変化への道程はアメリカのIslandがプロモーションの為に配布した10インチEP『Versions』でも明らかになったが、本人たちも意識的にこのアプローチを選んだ末の結果で、例えばファンキーな#4や名曲#7、トロンボーンの使い方も印象的な#10などの新境地開拓も為されたし、今聴いてもアレンジ的に決して付け焼き刃的な印象はない。むしろブリティッシュ・インディー・ギター・ロック的な出自と同時代のU.S.オルタナティヴ的なサウンド、両方の良いところを自然とクロスオーバーさせている独特な作風は本作以降のTWP〜CINERAMA〜新生TWP作品に引き継がれていくし、20年余が経過した今もその有効性を失っていない。時を経るごとに本作で到達した境地は評価に値するものになっていると思う。
 本作がTWPの作品では母国イングランドとのタイムラグ無しに発売された初めてのアルバムとなった北米ではこの作品を信奉するファンがいまだに多い一方で、殊イングランドに於いては従来のTWPらしいギター・バンド的なアレンジから離れたアレンジが施された数曲の存在が古くからのファンからは顰蹙(ひんしゅく)を買う結果にもなった。しかしそれも無理からぬ話なのかもしれない。それまでのRCAイヤーズがあまりに奇跡的に全てのタイミングが合いすぎていたのだとも言える。バンドのクリエイティヴィティーのピークとセールス的なピークがほぼ同時代に訪れた、現在では望むべくもない幸福な時代の後では次に何をやっても比較される運命にあったし、ここで敢えて危険を冒してまで確立された「型」からの脱却を図った意欲的な冒険を素直に評価できるほどファンの方も成熟していなかったのだとも言える。
 だがここでの挑戦はその後TWPの、というよりもデイヴィッド・ゲッジ個人のその後の活動に大きな収穫をもたらす事になる。Davidの近年のインタビューにおける「このアルバムがCINERAMAへの出発点」という発言はまさに我が意を得る所で、大きく膝を打ったものだ。

 結果的に本作はメーカーが望んだレベルでのヒット作にはならず、また翌1995年初頭IslandがPolygramグループ(現Universal)に吸収合併された結果、TWPを担当していたスタッフが全て解雇されてしまい、その煽りを食ってTWPもIslandからリストラされ、本作品も廃盤の憂き目に遭っている。その後何度か再発のためのアクションが取られたが、権利関係の解消が困難でなかなか再発出来ないため気軽に聞けない状況が20年も続き、Davidもステージ上で本作からの楽曲を演奏する時には「The Lost Wedding Present LP」(失われたLP)と皮肉っぽく紹介するほどだったが、前述の10インチEP『Versions』収録のアウトテイクやシングル・カップリング曲も含め、新たにリマスタリングの上、3CD+DVDの4枚組エクスパンディッド・エディションが英Edsel/Demon Musicから遂に2014年10月に再発され、ファンの溜飲を下げることとなった。
 なお、ここでそれまでのTWPには無かったバラエティー豊かな要素を持ち込んでファンやプレス連中からの集中砲火を浴びたプロデューサーのSteve Fiskはこの9年後の2003年にDavid GedgeのCINERAMAでのラスト・シングル"Don't Touch That Dial"で再タッグを組み、さらに翌年CINERAMAから改名する形でスタートした新生TWPの傑作アルバム『Take Fountain』を手がけ、両作ともに今度は手のひらを返すように絶賛される事になった。


<-- previous release "Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah (1994)"next release "It's A Gas (1994)"-->