INTERVIEWS

David Gedge - Paris novembre 2004 @ foutraque.com(抄訳)
Interviewer : Cedric Duchamp

原文はこちら

フランスの音楽サイトfoutraque.comに掲載された新生TWP正式始動後の最初の本格的なインタビューです。言うまでもなく、CINERAMAがどのようにしてTWPへと変化したのか、そして来る最新作である通称“シアトル・アルバム”『Take Fountain』の事がメインの話題となっていますが、それ以外にも10月に他界した友人のDJジョン・ピールの話も興味深いですし、またこのインタビュー中で次のシングル「I'm from Further North Than You」がDVDシングルでも発売される事が明らかにされています。なお日本語での訳出に際しては基本的に原文のフランス語に則した内容にしたつもりですが、検証のためScopitonesのフォーラムにてファンのBBCMarc氏が訳出された英語訳を大いに参考に致しました。この場を借りて感謝致します。また直接関係の無いインタビュワーの私的なエピソード(この後一緒に赤ワインを飲みに行ったとか、その類の話)などは割愛しています。[last modified:17th December, 2004 /translation by YOSHI@TWP-CINERAMA]


最後にデイヴィッド・ゲッジにあったのは10年前の話。ルーアンのExo 7でのライヴがはねた後だった。Weddoesは『Watusi』のツアーでやってきていた。そして今日、僕はDLGにパリでインタビューをしている。一対一で、まどろっこしい通訳も無しにだ{訳注:フランスでのライヴテープがいくつかあるが、どれもデイヴィッドが流暢なフランス語でMCをしているのを聞くことができるし、TWP/CINERAMA双方でオリジナル版とは別に仏語詞版の別テイクを発表した事があるのは御存知の通り。}。
もしロック好きなら、1985年にレコードデビューを果たし、Jesus & Mary Chainや My Bloody Valentine、The Batsといったノイジーなロック・ムーブメントの最中からスタートしたこのグループ、TWPは無視できない存在だ。にも関わらず、自らに課した7年もの活動休止の後に決定した“再編”{訳注:原文ではreformer。メンバーが後期CINERAMAの4人のまま一緒で実質上の再編成とはちょっとニュアンスが違うので訳者としての異論はあるが、インタビュワーへの敬意を表して語意に忠実に訳出した}のニュースにプレス連中はさほど興奮しなかったようだ。おそらく、連中は最新の流行りものにしか興味がないのだろう。まあとにかく、このFoutraqueのためにアメリカ的なサウンドを鳴らす英国バンドのフロントマンであり、年代を問わず、色褪せる事のない美しい曲を書いてきた男のインタビューをお届けする。彼らの残してきた作品…George Best、Bizarro、Seamonsters、The Hit Parade、Watusi、そしてSaturnaliaを聴けば、TWPがThe Pixiesと同様に重要なバンドである事が分かるはずだ。

F:まず最初の質問ですが、なぜTWPの“再編”を?
DLG:実を言うと、ちょっと長くて複雑な経緯があるんだよ。出来るだけ要約するけど…まずCINERAMAでここ数年作ってきたいくつかの作品は実際にはCINERAMA的ではなかったという事で。CINERAMAというのは僕にとっては何か(TWPとは)別次元の事だったんだ。僕と僕のガールフレンド、Sally (Murrell)のものでね。僕らは1から10まで何もかも全てをやってきて、それがギグをやり始めてからバンドへと変わった。二人のユニットだったCINERAMAが特定のグループになって何年かを過ごす事になった。さらには、最近はCINERAMAではやってこなかった様なもっともっとロックっぽい音になって。で、彼女も離れて、ごく自然にTWPになるのが当たり前に思えてきて。最初のシングル「Interstate 5」がその好例だよ。「I-5」はTWP的な構造を持った曲だから。『Bizarro』や『Seamonsters』の中に収まってもおかしく無いようなね。

F:じゃ別にバンドの結成20周年を祝うためのものではないと?
DLG:全然。そう言われるとエラく老けた気持ちになるね(笑)。

F:アルバムの『Take Fountain』は1994年の『Watusi』でも仕事をしたSteve Fiskがプロデュースを担当しています。なぜ再び彼と組もうと?
DLG:アルバム毎に変化する事は素晴らしい事だと思ってるのでね。新しいプロデューサーに、新しいスタジオ、といった風に。でも今回に関しては、僕は実際に(Steveの地元である)シアトルに住んでいる訳で、よく顔を合わせていたからね。僕とまたアルバムを作るアイデアには興奮してたみたいでね。だから一緒にレコーディングをやる事にして、他のメンバーたちもシアトルのスタジオにやってきた、という訳。

F:新しいアルバムについて話してもらってもいいですか?今シアトルに住んでいて、でアルバムには「Queen Anne」という曲があります。「Queen Anne」と言えばシアトルで最先端を行く街のことですよね?{訳注:夜景が綺麗な観光地としても知られ、アッパー・サイドには有名な高級住宅街がある}
DLG:そう、そこに住んでるからね。このアルバムはシアトルからの影響が大きいよ。正直に告白すると、こんな事は今までに無かった。シアトル周辺の街の事だったり、出来事や状況…そこで過ごしたここ2年間の備忘録とかちょっとした日記みたいなものだね。それが良かったのかはわからないけど、そうするのが最善だと思ったからさ!実際の話、僕らの最初のアルバム『George Best』も私的な内容だった。{訳注:1987年のデビュー・アルバム『George Best』にはデイヴィッドが“幾分か私小説的”と語るマンチェスターで過ごした青春時代からインスパイアを受けた曲が数多く含まれている。}
『Take Fountain』はシアトル賛歌なんだ。ただタイトルだけは違う。あれはベティ・デイヴィス{訳注:往年の名女優(1908-1989)。アカデミー主演女優賞を2回受賞し、5年連続ノミネートの記録は未だに破られていない大記録。代表作である1950年度作品『イヴの総て』の原題は"All About Eve"で、『George Best』収録曲と同名である。}のインタビューから取った。あるジャーナリストが彼女に「どうやってハリウッドで成功したんですか?」と訊いたら一言「Take Fountain (Avenue)」と応えたんだ。 Fountain Avenueはハリウッドではよく知られた通りの事で、あそこには噴水がそこらじゅうにあって、ハリウッドへの一番の近道とされている、という…。アルバムタイトルとしては皮肉っぽい響きだけどね…。
{*訳注:出典となったエピソードでの質問は実は若干ここでの質問とニュアンスが違って、"What advice you would give to young actresses coming to Hollywood"、「ハリウッドを目指す若い女優たちにどんなアドバイスをします?」とあってHollywoodを映画業界と取らずに街の名前として捉えて「ファウンテン通りに行けばいいんじゃない?」と返したという、ただのアメリカンジョークであるようで、そんな簡単な近道なんてある訳ないのよ、という主張も隠されている。長く複雑な道のりを経てこの傑作に辿り着いたデイビッド・ゲッジの心情を表したようなタイトルでもある気がするのだが。}

F:かつてCINERAMAで"Edinburgh"と呼ばれていた曲が(今度1月に出るシングルである)「I'm from Further North Than You」になりました。このタイトル変更はなぜ?
DLG:そのワーキング・ネームに満足出来なかったのが主な理由だよ。だから変更した。

F:「Don't Touch That Dial」も去年シングルになったCINERAMAの曲でした。なぜ新作でこの曲を再び取り上げる事に?
DLG:そう、確かにCINERAMAのシングルだったけど、でも曲自体はかなり、ものすごくTWPっぽかったからね。だから再録音してみた訳で、『Take Fountain』ヴァージョンはもっと“ロック”してるよ。

F:「Interstate 5」の意味は?
DLG:ワシントン州とメキシコを繋いでいる道路の名前だよ。シアトルを通っていて、それからオリンピア、サン・フランシスコにサン・ディエゴ…

F:音楽的には、あなた達の音楽はよくあるイギリスのグループにありがちなものではありませんよね。自分たち自身のサウンドを作る術は熟知していると思いますけど、他のグループがイギリス的なものになってしまうという事についてはどう考えていますか?
DLG:その通りだね。イギリスのグループの抱えている問題は、そのレコードを聴くとどの音楽から影響を受けたのかが直ぐにバレてしまう事だよ。THE WEDDING PRESENTに関して言えばもっと複雑だ。僕はイギリスの音楽も愛しているし、一方でアメリカの音楽も好きだ。僕らの音は両方の波長を伴っている。僕にとっては音楽をユニークなものにするために重要な事だよ。

F:ラブソングを好んで書いてますけど、題材の選択として、あなた個人の趣向のものですか?
DLG:僕にはラブソングを書くのは簡単な事だけど、他の題材について書くやり方は知らないから。政治的な事を書く挑戦もしたけど、結果は散々で。恋愛についてのテーマは世界共通だし、男女の関係の始まりにも終わりにも付き物で、その事について話始めるといつだってその時の感情や激情を甦らせるものだから。

F:恋愛、と言えば、やはりSally (Marrell)があなたの元を離れて、相当落ち込んだんじゃないですか?
DLG:悲しかったよ、とてもね。長い長い愛の冒険と言うべき歴史だったしね。今は全てが上手く行ってるし、ページは完全にめくられた感じだね。

F:新しいアルバムに彼女に向けたメッセージは込めました?
DLG:まさか。でもこのアルバムを作る事で自らの恐れや幻想を克服する事にはなったけどね。

F:ちょっと昔の話をしますけど、1ヶ月に1枚シングルを出す事を1年間に渡って行うという(『The Hit Parade』の)アイデアは今でも可能なものだと思いますか?
DLG:難しいだろうけど、可能だと思うよ。最初のシングル("Blue Eyes")を出す前に何ヶ月も綿密な計画を事細かに詰めて行った訳だけど、あれは真の意味でのチャレンジだったね。今じゃ同じ事をやろうとするともっと高くつくからね。

F:つい最近あのTwin Peaksのテーマ「Falling」のカヴァーを聴きましたよ。
DLG:あのシリーズで一番のお気に入りなんだ!

F:なぜあの曲を?あのTV番組が好きだったとか?
DLG:そう、ファースト・シーズンは最高だった。あれ以降は登場人物も増えすぎたし、急な展開も多くてね。「Falling」に話を戻すと、とにかくメロディが素晴らしいもので、だからその見地から見直して、自分たちのタッチを加えてみたという訳。

F:12月の「No Christmas」のカップリングでエルトン・ジョン("Step into Christmas")もやりましたよね。あの曲はなぜ?
DLG:いかにもクリスマスっぽい曲をやりたくて、彼のファンじゃなかったけど、あれが最適のチョイスだと思ったから。

F:TWPを知らない人にどのアルバムが一番オススメですか?
DLG:難しい質問だね。たぶん『Take Fountain』が一番いい入り口になるんだろうけど、もしその人が興味を持ってくれるのなら、『Bizarro』も『Seamonsters』『Watusi』も、なんなら個人的に気に入っている『Saturnalia』も。それぞれ少しずつその前のアルバムのスタイルが入っているしね。

F:亡くなったJohn Peelの事を訊いたら問題あります?
DLG:とんでもない…気を遣ってくれてどうも。

F:かなり近しい間柄だったと思いますけど、彼の突然の訃報を聞いた時には、どの様に感じました?
DLG:とても信じられなかったし、信じたくもなかった。僕の目にはとても丈夫そうに見えたし、特に病気している訳でもなく。それにまだ十分若いと言える年齢だったし。{訳注:John Peelは2004年10月25日、休暇で滞在していたペルーで心臓発作の為急死した。享年65歳。}あの後、彼が亡くなった事で何だか置いていかれたような気持ちになって無性に寂しくなったよ。いつもよく電話してたからね。泣きはらしたし、飲んだくれもした。酔いつぶれたよ。本当にいい人で、死ぬには早過ぎた。彼の居なくなった後では世界の音楽が全く違うものになってしまうだろうね。多くのグループが彼に見出されて、今あるグループの75%くらいが彼によって紹介されたものだよ。最初に彼らの音楽を紹介したのがまさに彼、ジョン・ピールだった。

F:12月にはロンドンでJohn Peelを追悼する特別な催しがありますが、そこには出演しますか?
DLG:うん、何曲かTWPの曲をプレイするつもりだし、16日のRadio 1にも出演する。{訳注:2004年12月16日、BBC Radio 1で6時間に渡って放送された「Keeping It Peel - John Peel Night」の事。新生TWPは3曲をライヴで演奏した。}

F:TWPのDVDをリリースする計画はありますか?
DLG:検討しなくちゃね。何年か前にTWPのヴィデオ・ソフトをリリースした事はあるんだけどね。{訳注:現在廃盤の『*(S)Punk』と『Dick York's Wordrobe - The Hit Parade Videos』のこと}次のシングルの「I'm from Further North Than You」はDVDでもリリースされるよ。

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