INTERVIEWS

Aug. 2001 David Gedge Speaks
原文はこちら

デイヴィットのその3コードのスラッシング・ギター・サウンドからセルジュ・ゲーンズブール・スタイルのポップ・チューンまでカヴァーする、作風の飛躍ぶり、なぜバンドがクッキング・ヴァイナル・レーベルとの契約を終了したか、「失われたウェディング・プレゼントのアルバム(lost Wedding Present album)」についての嘆き、そしてCINERAMAのニュー・シングルとアルバムについても洗いざらい語った。Jono Scottがその全てを暴く。

今取り組んでいるアルバムのワーキング・タイトルは『Do The Hustle』だ。

Q.まずはこの事から訊かなくては。CINERAMAのもうすぐ出るニュー・シングルについて教えてもらえますか?

デイヴィット・ゲッジ(以下DG):10月に出る予定なんだ。タイトルは「Health and Efficiency」(以下"H&E")。実は5月のジョン・ピール・セッションで披露した曲の1つなんだけどね。みんな気に入ってくれたみたいなんで、シングルにしようと思ったんだけど・・・ただ決してシングル向きの曲ではないんだけどね(笑)。


Q.どの様な形態でリリースされるんですかね?

DG:僕らの前のシングル"Superman"みたいになるよ・・・3曲入りのCDシングルに外国語で唄ったヴァージョンの入ったカラー・ヴァイナルの7インチ盤だね。


Q.その新曲についてもう少し詳しく教えてもらえますか?

DG:いいよ・・・全部で5曲になるんだけど、タイトル・トラック以外には、ちょっとサーフ・サウンドっぽい"Swim"(この曲にはヨークシャー海岸で録った波の音が入っている)、ジョン・バリーの素晴らしいボンド・ムーヴィー(=007シリーズ)の主題歌"Diamonds Are Forever"のカヴァー・ヴァージョン、それにフランス語で唄ったアコースティック・ヴァージョンの"H&E"が、セカンド・アルバム『DISCO VOLANTE』の時のセッションで録っておいた"Lollobrigida"をゲーンズブール風のフランス語で唄ったテイクとのカップリングで7インチの方に収められる。これ、ホントにイイんだよ、自分で言うのもなんだけど。それとそうそう、アメリカのManifestoがU.S.向けにリリースしてくれる事になっている。これが僕らにとってはアメリカで初めてのシングルになるはずだよ。


Q.この間Steve Albiniのスタジオでのセッションで9曲が録られたそうですけど・・・。

DG:うん。今年のアメリカ・ツアーの間に不意に彼のスタジオにスティーヴを尋ねていってね。もういつもの事なんだけども、僕らが急に行ってもとにかくその時に持っている曲を録ってしまう。たまたまその時はシングル用の楽曲やらいろいろあって。で、結局9曲を録ったという訳だね。


Q.じゃあ、CINERAMAのニュー・アルバムは来年ですか?

DG:計画としてはね。今別に6、7曲の完全な新曲をうちのギターリストのサイモン・クリーヴと一緒に仕上げていて、出来ればバンドで11月にレコーディング出来ればいいなと思ってる。それからたぶんオーヴァーダブと(最近じゃこういうのは気取った物言いになってしまうんだけど)オーケストレーションってやつを冬の間にやっつけて、来年初頭にはミックスダウンとマスター作成に入れる感じかな。


Q.何かワーキング・タイトルは決まっているんですかね?

DG:あるよ。『Do The Hustle』だ。


Q.門外漢なんで変な訊き方になるかもしれませんが、CINERAMAで用いてきたオーケストレーションの技術はどの様にして習得したんですかね?

DG:特に驚くような事は無くてね・・・僕がそれだけ経験豊富ってだけの事だよ!CINERAMAの曲ではアレンジメントを手がける機会がかなりあって、コンピューターやサンプラー、いくつかのソフトを用いる。ただ難点なのはレコーディングしたいっていう場合には、前だったら要る物はギターだけだった所を、今は関係するもの全てスタジオに持っていかなくてはならない。だいたいセッティングに半日は掛かるしね。


Q.じゃあ、2枚のCINERAMAのアルバムで聴けるオーケストレーションは全てコンピューターで行われたって事ですか?

DG:コンピューターで書かれた、って意味ではそう。本当に奴は賢いよ、正味の話。僕はきちんと規則通りスコアを読んだり書いたりする事は出来ないしね。でも替わりにコンピューターが全部やってくれる。僕はキーボードやストリング・セクションやブラス・セクションやらのサンプル音をトリガーで打ち込んでやるだけ・・・で、ベーシックなサウンドに満足したら、スコアをプリントアウトする。それからスタジオに行ってストリング・セクションのミュージシャンに渡すとまず言うんだけどね「こんなの指が6本無いと出来ないって!」って(笑)。最初にオーケストレーションを始めた時は為す術が無くてね。でもジョン・バリーやエンニオ・モリコーネの映画音楽がホント大好きだったから、何とかやってみようと思って。最初にコンピューターでガチャガチャとやり始めた時は、僕の書いたパートのいくつかは実際には演奏出来ないものだった、なんて事が結構あったよ。例えば、最初のアルバム『Va Va Voom』で2本のオーボエが一緒に演奏するパートを書いたんだけども。で、オーボエ奏者がスタジオに演奏しに来た時にそれを見て「う゛ぇ〜こんなのやらせないでよ〜!」って言ったんだよ。なんでかわからなかったんだけどさ。コンピューター上では見事に鳴って聞こえただけにね。
でも、彼は正しかったよ・・・実際二人でやってもらったらそりゃあもうひどい代物だったから!
何でかというと、オーボエってそもそもはリード楽器でね。バグパイプみたいなやつとかと一緒で。だから純粋な単音っていうのは吹けない。 例えばフルートでの場合はなんだけど、あれはクリアーな単音が吹けるから上手く行くんだよね。
そんな感じで、これまで3年か4年かけてだんだんと色々な楽器のそれぞれがどこまで出来るのか、どこまでが限界なのかを学んで、今ではアレンジをやる上で何が出来て何が出来ないのかが分かった、という訳だね。


次のツアーでどのTWPナンバーを演奏しようかって考えているよ。"Brassneck"みたいなやつもね!

Q.Camden Deluxeがウェディング・プレゼントの2枚の古典、『Bizarro』と『Seamonsters』をリイシューしたばかりですね。それから、最近ではウェディング・プレゼントの曲をCINERAMAでも演奏してます。 ああいうギター・サウンドの頃に戻ろうとは思いもしなかったんじゃないですか?

DG:オーケストレーションの為にヘヴィーなギター・サウンドを取り入れるのを止めてみたり、CINERAMAでソフトタッチなギターを演奏してみたりというのは実に開放的な体験だったんだけど、でももう何年か続けてきてて、だんだんとWeddoesでやっていた様なサウンドが恋しくなってね。
再び『Bizarro』と『Seamonsters』を聴いた事が確実にそういう思いにさせたんだろうね。
その2作のCDのリマスター作業の為にロンドンに向かって、その時に、大袈裟じゃなく、ここ何年かで初めてその2枚をちゃんと聴いたんだよ!いやマジで(笑)。それで思ったんだよ・・・「このアルバムってホント最高だよな!」って。その事を心底誇りに思って、またこういうぶっ飛んだギター・パートをラウドに鳴らせたらいいよな、って自分が思い始めている事に気が付いた。
それからレーベルがこのリイシューのプロモーションの為にウェディング・プレゼントでライヴができるかどうか訊いてきたんだよね。僕は他のメンバーたちに興味があるか訊いてみたんだけどみんな大抵「えぇ〜っと、そうね・・・それっていつ?」みたいに答えて、スケジュール帳をチェックしてね。みんな別にそのアイデアに乗り気じゃなかったんで、まあ、僕も別に無理強いはしたくなかったんだ。


Q.だからウェディング・プレゼントのリユニオンは今回無かったと。では将来的にCINERAMAのギグでさらにウェディング・プレゼントの曲を期待しててもいいですかね?

DG:そうね、僕の欲求は確実に強まってはいるね・・・何せ僕の曲だからさ!WeddoesのレパートリーをCINERAMAで演奏した時かなりイイなこれ、って思ったんだよ。演奏するのを楽しんだし、もう次のツアーで何を演奏しようかって考えているよ。古手のファンが狂喜乱舞するだろう"Brassneck"みたいなやつをやろうかな、なんて事まで考えてるぐらいだからさ!


Q.昔のWeddoesの曲にヴァイオリンのパートを足してみようか、なんて考えた事は?

DG:いいアイデアだね。何人かのウェディング・プレゼントのファンには冒涜行為と取られるかもしれないけど・・・でも、だから何、悪い?実際の話、もうCINERAMAのギグでは生でストリングス・プレイヤーを用いる事は無いだろうけどね。最初にCINERAMAでライヴをやり始めた時、小規模のストリング・セクションも伴ってはいたんだけど、正直あまり上手くいかなかった。 僕らがその頃演奏してたライヴハウスは小さかったんで、彼らは正確に演奏出来なかったんだ。時にはステージの上にバンド全員が乗り切らなくてギュウギュウだったり、またある時にはモニターや楽器そのものの音がきちんと聴き取れなかったりで。だから、徐々にバンドそのものの人員は削減されていった。
今はTWPのラインナップにキーボード・プレイヤーを足した様な感じでね・・・もちろんサリー(・マーレル)の事だけど。
そうそう、BBCのMaida Valeスタジオでライヴ・ピール・セッションをやったんだった。弦楽器にフルート、トランペットなども入れたフルの9人編成で、あれは最高だった・・・明らかに素晴らしいスタジオだから、一流のエンジニアも居て、最高のモニターもあって、だから全員が自分の音をきちんと聞き取れるんだよね。そりゃあもう、上手くいくさ。 もし僕らがもっと成功して、然るべき場所で演奏出来る様になったらまた考えてもいいけど、まあ今の状態ではね・・・。


Q.言い換えれば、SouthamptonのJoiner's Armsみたいなライヴハウスにロンドン・シンフォニー・オーケストラ全員を詰め込む意味なんか無いと。

DG:その通り


僕はファンの為にレコードを作った事なんて一度も無い。

Q.話はちょっと横道に逸れますが、いつも興味深かったんですけど、(良くも悪くも)最も有名なウェディング・プレゼントの曲"Kennedy"について・・・あのエンディングのサウンド、一体全体どうやってあんな事を為し遂げたんですかね?50本ものギターを重ねているみたいな感じですよ。

DG:ハハハ、おかしいねそれ。今度の『Bizarro』のリイシューのライナーを担当したMark Beaumontが全く同じ事を訊いてきたね。でも、あれは3本のギターだけだよ。ウソじゃないって!!
まああれはステレオで録音されているから、言うなれば6本になるのかな。 新しいギターのパートが始まると、他のパートが下に潜り込むから、常に音が重なっていく様な印象を与えるんだろうな。ほとんどドラムの音がフェイド・アウトしそうな程、各々新しいギター・パートがその中でぶつかりあっている。たぶんに心理学的なものだよ・・・あれはドラムの音をバック・シートに乗っけたまんまでもギターをあれだけドライヴさせてバカでかく鳴らせる事の証明だね。ああいう音楽は本当にスリリングだと思うね。


Q.実は、学生の時の友達が試験の前に気合を入れる為にいつも"Kennedy"を聴いてたんですよ!

DG:(笑)
まあ、もちろんエンジニアはああいうサウンドは全部嫌うけどね。これは「完成された」音じゃないって。全く同じ様な問題を今度の新曲"H&E"のレコーディングの時にも抱えてね。
なぜって、あれは重厚なギター・サウンドが幾層にも重なり合って、ドラムの音が多くなればなる程ギターはバーストし続ける。
エンジニアはサジを投げて「ああっ、もう!でもまだドラムは聞こえるでしょう!」だって。それでも、まだまだ物足りないね!


Q.CINERAMAは明らかに典型的なWeddoesスタイルのサウンドから離れていっていたにも関わらず、前作『Disco Volante』には長いノイジーなエンディングが付いたフル・ヴァージョンの"Wow"が収録されていました。
あれは古株の「ウェディング・プレゼント狂」達への贈り物だったんですかね?

DG:え〜っ、そりゃあ率直に言うけど、全然っ違うよ!
全く自分勝手な物言いに聞こえるだろうけど、僕はファンの為にレコードを作った事なんて一度も無いね。
僕はいつだってバンドは・・・まあ音楽自体を弱くするものだと思ってきたんだ・・・なぜって結局バンド内で意見を妥協しなければならないだろ。全てのウェディング・プレゼントのレコードは、僕らの変化の表れだと思う。 僕らが作ったアルバムは、特定のファンを失って新たなファンを引き入れる、その連続だった。
ある人たちには『Bizarro』がウェディング・プレゼントの音なんだろう。また他の人にとっては『Seamonsters』だろうし。『Bizarro』が好きな人にとっては『Seamonsters』は暗過ぎて嫌われるし、『Seamonsters』が好きな人は『Watusi』はポップ過ぎて嫌いだっていう。
レコードを売るって事に関してはそういうのは僕の人生に起こった不幸だろうけど、アーティストの見地では何度も同じ様なレコードを作らなかった事は誇りに思っているよ。
ま、とにかくだ、僕が『Va Va Voom』を作った時は、CINERAMAはまだバンドじゃなかったし、ただ僕とその小さなソロ・プロジェクト、っていうだけだった。
主な考えとしてはウェディング・プレゼントの様な音がするソロ・レコードは作りたくなかったという訳で・・・それに関しては揺るぎなかった。
だからラウドなギター・サウンドみたいなノイジーな要素は特に要らないと考えたし、結果として出来たアルバムは、まあ、上出来と思っている。ちょっとアコースティック過ぎたかもね。でもあれは「明らかに」正解だったね、僕にとっては。


Q.あなたが言わんとする意味はわかりました。でも10年という時の間に、あなたの作ってきた他のレコード以上に、そういうこだわりは時代遅れなものになっていくかもしれないな、とも思うんですが。

DG:そうね、たぶんそれは正しいね。でも『Disco Volante』に関しては、僕らはグループとして取り組んだし、僕のシステムから生み出された完全なソロ・アルバムも既にあった。だからどんなサウンドになろうと全く気にならなかったんだ。本当に!もし人がそれをウェディング・プレゼントみたいに聞こえるとしたとして、それが何だって言うんだい!僕はラウド・ギターや激しいドラムからソフトなサウンドまでフル装備のノウハウを持っているんだから。


Q.でもオーケストラを配したウェディング・プレゼントのようなものにCINERAMAがなっていく危険性もあるという考えはありませんかね?

DG:あっそう・・・いつもそうやって人は同じくくりで結びつけたがるんだから!でもCINERAMAがウェディング・プレゼントのレパートリーをライヴでやっても、他のセットの曲とは全然似ていないだろ。ソングライティングのスタイルはCINERAMAとは全然違うと思うけどね・・・


Q.でもいくつかのWeddoesの曲はCINERAMAのアルバムに入っていてもおかしくない感じですよね。

DG:君が想像する程は多くないよ・・・言ったように・・・分析し始めたらそこに何かしらリンクするものはあるとは思うけど、二つのグループは実際には極めて別個のものだよ。


Q.『Bizarro』と『Seamonsters』をリマスターした時、一緒にレコーディングしたメンバーは一人もその場にいなかった訳ですが、その録音素材にどのような気持ちで向き合ったんですかね?

DG:別に不自然には思わなかったけどね。この件に関する最大のポイントは僕が完全にこの音楽に取り憑かれているという事だよ・・・時にバンドの他のメンバーを差し置いてもね。良いか悪いかは別として、僕はこれらのアルバムを自分の子供のように考えがちだし、今回の作業中もそんな感じがあった。僕はアルバムそれぞれがたまたま今はそこに居ないだろう他の人々によって高められた僕自身の仕事の、それぞれ異なる風景を写し出したスナップ写真だと思う。だから一人で作品に向き合う事は別におかしな事じゃない。いずれにせよ、その今はバンドにいない人たちのほとんどとは未だに繋がりはあるんだし。


「Watusi」は今や「lost Wedding Present LP」みたいな感じだね。

Q.今後こういうリマスター再発ものは期待してていいんでしょうか?Island Recordsが再び『Watusi』をリリースする、なんて事とかは?

DG:まあCamden Deluxe(RCA時代の作品の権利を有している)に『Hit Parade』シリーズの再発に関しても訊いてみたんだけど、「たぶん、今回の2枚の売り上げ如何によっては、だろうね」だっていうから、『Watusi』に関してはもう、今や廃盤な訳で何か起こらない限りは無理だろうね。今じゃ「失われた(lost)ウェディング・プレゼントLP」みたいになってしまった。


Q.『Watusi』は素晴らしいアルバムですよ。

DG:どうもありがとう!みんなから「もう入手出来ないんだけど」っていうお叱りのe-mailをよくもらうよ。多くのウェディング・プレゼント(とCINERAMA)のアルバムのアメリカに於ける権利を持っているManifesto、彼らはRCA時代の作品をあそこでリリースしてるんだけど、一度『Watusi』の権利が取れないかIslandに接触してみた事があったんだけど、答えは「ノー」だったって。でも何故かはわかるね・・・Islandみたいなメジャー・カンパニーはただ「ヒット作品」が欲しいだけなんだよ。再発するためにプロジェクトを招集して、全てのマスター・テープを集めて、契約書関係も処理して・・・そんな事はマライア・キャリーの事でも無い限り無駄骨だよ。だから『Watusi』は未だ倉庫に眠ったまんまだ。


Q.それは残念です・・・CINERAMAの視点から見れば、これは本当に興味深いアルバムですから。いくつかの曲は本当にCINERAMA的ですよ、例えば"Spangle"とか。

DG:まさしく!たぶん"Spangle"はCINERAMAのアンソロジーの1曲目に来る楽曲だろうね。{訳注:デイヴィットは常々『Watusi』を“CINERAMA発祥の地”である、という主旨の発言を繰り返している。}


Q.そうですねえ・・・そうだ、こんな事ありましたっけ。よくあなたステージ上で"Status Quo, 25 years in business!"{訳注:結成30年以上一芸必殺のブギー・サウンドでおなじみのステイタス・クオを揶揄した洒落}って叫んでました。じゃああなたとピーター(・ソロウカ){訳注:TWP初代ギターリスト}はインディーズ・ギター・バンド・シーンのRossi and Parfitt{訳注:そのステイタス・クオーの二大看板}だったと?

DG:(爆笑)いやいや。それを言うなら僕らはLaurel and Hardy{訳注:Stan LaurelとOliver Hardy、サイレント映画時代の有名なコメディ・コンピ}だよ。


Q.でも例えば"Take Me!"を例に取ると、ほとんどステイタス・クオー・チックなギター・パートが占めてますよね!

DG:あれ程馬鹿げてはいないよ。つまり、9分はとても長いけど・・・あの後半のインストパートで何か発展させる必要があったんだよ!最初の3分で歌が終わってあの曲の残りの時間は音楽の断片と言うより何かの意思表明の様な感じでね。ホントに素晴らしいレコードだよ・・・僕はいつだって極端なものが好きだったし、きっと君も気に入ってるだろうけど。最初のシングル"Go Out and Get 'Em Boy"からしてそうだけど、Weddoesはああいう風に過激なサウンドを作りだしてきた。今、CINERAMAに於いてまた同じ様な事を、全く違うやり方で試みているんだ。
僕はライトハウス・ファミリー{訳注:1998年に"High"が大ヒットした英国のポップ・デュオ。}とか金儲けの為に音楽を作ってるのじゃない限りは口当たりの良い、安全なレコードを作る様なヴィジョンは持ち合わせていないのはもちろんだとも。ただ芸術的な意味でそういうやり方には納得させられないだろうとは思わない。


Q.あなたの「極端なレコード」に対する愛がSteve Albiniへ導いていると?

DG:Albiniを起用したかったそもそもの理由(言い換えればそれはシングル・ヴァージョンの"Brassneck"での話だけど)はThe Pixiesのアルバム『Surfa Rosa』があったからなんだ。あのLPのサウンドには本当に驚くばかりでね。ああいうサウンドが欲しかったんだ!ピクシーズみたいな、じゃないよ、あのレコードのだ!その結果には心から満足しているし、みんなザ・ドアーズみたいなとか何とかって言わなかったし。現実にキース(・グレゴリー){訳注:デイヴィットとは前身のLost Pandasからの付き合いだったTWP初代ベーシスト}がザ・ウェディング・プレゼントが比較された事のある全てのバンドのリストを書き出した事があったんだけど、文字通り何百バンドもあったっけねえ。


Q.Albiniとの仕事は何がそんなに良いですかね?

DG:そうね、彼はマイクを正確にセッティングしたり楽器をチューニングしたりケアするのに十二分に時間を掛けるんだ・・・完全に然るべき形で行えるようにね。だから、全てのサウンドは本当に完璧で。それからただバンドに演奏させる。
彼はザ・ウェディング・プレゼントのライヴでのサウンドを本当に記録する事が出来た最初のエンジニアだ。アルバム『Seamonsters』は彼と12日間で録音したんだけど、実は僕らは3週間スケジュールを押さえてあったんだよね。でも言うんだ「そんなには必要ないよ」って。実際彼は正しかった。その前の『Bizarro』には6週間掛かっている、『Seamonsters』にはその何分かの一だったけど、サウンドはグッと良くなった。だからそれ以来、僕はそのやり方を通している。CINERAMAの全ての楽曲は実に素早い時間で録音されているんだ。


Q.いままで曲を聴いていて「これ俺たちのじゃないか」なんて思った事はありませんか?例えばプラシーボやフィーダーの曲とか、それにアッシュなんかにもザ・ウェディング・プレゼントっぽいものが聞こえてくると思うんですけどね。

DG:面白いね。だって僕はアッシュの初期の曲をプロデュースしているしね。


Q.どの曲?

DG:確かぁ〜B面の曲だったな・・・"Uncle Pat"のかな?{訳注:1994年10月発売の通算3枚目。ただ、クレジット上のプロデューサーはMarc Watermanになっているのだが}あれは彼らがブレイクする前の最後のシングルだったよ!(笑)そりゃあさ!君の話に倣って言うなら僕は自分たちのサウンドを他のたくさんのレコードから聴き取れるだろうけど、そんなの僕が言う事じゃないだろう?ただの自惚れにしか聞こえないだろうからさ!


Q.なぜクッキング・ヴァイナルを離れたんですか?

DG:(ため息をついて)
それは話すと長いよ。僕ら(ザ・ウェディング・プレゼント)が自分たち自身でReception Recordsを運営していた時は、メジャー会社と契約する事にはナーバスになっていた。
大手企業がバンドをそのバンドの意志とは無関係な事をやらせる様に仕向けていく恐ろしい話はよく聞くだろう? でも僕らがついにRCAとサインした時にはそういった類の事は起きなかったけど。 本当に素晴らしい時代を共にしたよ!
やりたい放題だったし・・・「ウクライナ民謡?いいよ!」「1年の間に12枚のシングルだって〜?やってみたら!」、彼らはただそうさせてくれたんだ。 次の『Watusi』期のIslandでも同じ感じでね、少なくとも問題はなかった。 で、Cooking Vinylだ・・・「いいじゃん、一番大きなインディーズ・レーベルだし。上手く行くだろう。」って思ったんだが。
でもメジャー会社がやるような恥ずべき行為をやらかしたんだ。
例えば、彼らはアメリカで『George Best』『Tommy』『Saturnalia』と『Mini』が入った『Registry』というボックス・セットをリリースしたんだよ。 アートワークや内容は一切そのまんまでね。でもバンドに許可無く出されただけではなく、バンドにその事を一切知らせもしなかったんだ!ヒドイじゃないか!
きっと奴らは「それが気に入らないっていうんなら、僕らを訴えればいいさ!」って態度を取るだろうし、法的措置のコストが彼らに嫌悪感を持たせるだろうと・・・まあそのようにお察し致しますがね。
バンドはたった1つの馬鹿げたリリースを止めさせる為に巨額の費用を投資するつもりは毛頭無いよ。 でも僕から見たら、メジャーと契約していた時でさえそんな仕打ちはされなかった。
そんなこんなで、最初のCINERAMAのLPが出た後、サリーと僕は全てを自分たちで賄う事に決めた。 僕はかつてはReception Recordsを運営していたんだし・・・事業に関わる全ての事はわかっている。 他にいくつか契約したがっていたインディーズもあったけどね、たぶん僕のインディーズ会社に対する信頼なり理解はもう奴らに汚されてしまったから。それに比べれば、完全に自分自身でコントロール出来るって事は本当に満足な状況だよ。


次のCINERAMAのアルバムはもっと重厚な作品になるね

Q.要するにですね、CINERAMAのサード・アルバムではもっとヘヴィーなサウンドを期待してていいんですかね?

DG:そうだね、そうなるだろうね。
ここ1、2年の僕のわずかな探求はジョン・ピールが「CINERAMAの気絶するようなストリングス」って呼ぶようなものと古典的なウェディング・プレゼントの「幾重にもノイジーなギターが折り重なった」アプローチを結びつけた。
『Va Va Voom』には今でも満足してるよ・・・でも、言ってきたように、新型のCINERAMAの作品は・・・もっと重厚になるね。


Q.詩作に関しては何か新しい方向性は?

DG:ますます淫靡な世界になっているね。


Q.あなたの曲の大半は情事に耽っている事やその他の結婚生活の戯れにまつわる事に関する歌ですね。サリーとの関係はその歌にどのように反映されているんですかね。

DG:なんで人がそういう質問をしたがるのか理解に苦しむね・・・まるで映画俳優の配偶者に彼なり彼女が映画の中でやっているラヴシーンをどんな風に実生活で再現しているのか訊く様なものじゃない?確かに、僕が書いたものには実体験から来る物もあるだろう・・・でも概して、僕はその役柄を演じているに過ぎない。


Q.あなたの声はここ何年かでさらにソフトなものになっています。CINERAMAの"Maniac"における歌唱は明らかにWeddoesでの最初のアルバム『George Best』の"Everyone Thinks He Looks Daft"とは異なるもので。何か特定のレッスンは受けたりしたんですか?

DG:80年代中頃にいくつか、でもそんなに助けにはならなかったな。とにかく、先生が彼女の乳房に僕の手を置かせて、正確に呼吸すると胸がきちんと動くのを確かめさせる、なんていうのはもう二度とゴメンだね!


Q.ウゲッ!、ですね・・それではああいう風に歌うために意識して努力しているとか?

DG:ただ上達しただけの話だよ・・・もしくはそれまでヴォーカルに関してそんなに真剣に考えた事が無かったとか、だね!
CINERAMAの曲はウェディング・プレゼントのよりはもっとソング・オリエンテッドだから、前よりも歌うことに重きを置く様な境地に至ったんだと思うね。
別段具体的にソフトに歌おうと努めた、なんて事はね・・・ただ・・・よくわかんないけど、前よりは表情豊かにはなっているね。
初期のパフォーマンスのいくつかは僕には今ではキツくてね・・・より激しい感情を伝えなければならないし、でも最近では自分の声にもう一度チャンスを与えてもいいかな、なんて考えているんだ。


Q.CINERAMAを始めて、あのウェディング・プレゼントのギター・サウンドの呪縛から自らを解放する事になりましたが。CINERAMAにディスコ・ダブ・スタイルを取り入れる、みたいな事は?

DG:僕自身は、もっとデス・メタルっぽくしたいかな、と・・・


Q.じゃあ言い方を変えますが、将来的な野望というのはなんでしょう?

DG:先のことはそんなに考えないよ。 前に(たぶん何千回と)言ってきたけども、計画みたいなのは建築家の為のものなんだって!
たぶんポップ・ミュージックはもっとスポンティニアス(自己発生的)であるべきで、なるようになるものだと思う。
前なら「どうやれば自分の仕事に大好きなTVのテーマソングや映画音楽への愛情を注ぎ込む事が出来るか?」という事が課題だった。今じゃ答えは出てるけどね。 誰も次の課題が何かなんて、知る由はないね。

Q.ところで、あのTVドラマ「チアーズ」のテーマ・ソングのカヴァーは、僕が聴いてきた中で一番好きなカヴァーの1つですよ。

DG:ありがとう。それにあれはアレンジを始めてから録音するまで最も時間が掛かったものでね。80年代のレディング・フェスティヴァルの時に取りかかって、結局発表されたのは1997年の"Montreal"のシングルのB面だったから!

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