INTERVIEWS

March 2000
Interview with David Gedge
of Cinerama and The Wedding Present

(インタビュアー:Rev. Tyler Jacobson)

Fallout Magazineより
原文はこちら


興業成績Top5にランクインしている映画『High Fidelity』を
ちょうど観てきたところなもんで、
こんな出だしはどうかな、と思う。

  『後世に名を残す5大作詞家(Top 5 lyricists of all time)』
  1位:ビリー・ブラッグ
  2位:デイヴィッド・ゲッジ
  3位:ジョン・レノン
  4位:トニー・ザヤコウスキ(Lotion)
  5位:ピート・タウンシェンド(The Who)

デイヴィッド・ゲッジは80年代のほとんどと90年代を通じて
この時代の最高の部類に数えられるであろう曲を
クリエイトしてきた。
彼の詞は辛辣な愛を残酷なまでに丁寧に記述し、その音楽性は
こぶしを打ち付けて血を滲ませるような速さを伴ったものから
優しくアコースティックなタッチのものまでと幅広い。
The Wedding Presentは聴けばすぐにそれとわかる
独自なサウンドを有し、
その独自性は世界中にいるファンの趣向も証明しているだろう。

しかしだ。そのThe Wedding Presentのリーダーは新しい
プロジェクトCineramaにおいてはそういう独自さを明確に
打ち出しては来なかった。
デイヴィッドに時間をもらって、Cinerama、The Wedding Present、
そしてThe Smiths(?)について語ってもらった。


僕はポップ・ミュージックの大ファンなんだよ

Q.  なぜThe Wedding Presentがほとんど
  「David Gedge個人のプロジェクト」のような状態で
  あったにも関わらず、
  あなたはCineramaでレコーディングしようと思われたんでしょうか?

David Gedge(以下)D.G.
  『答えは簡単だよ。だって、The Wedding Presentは
   David Gedgeのプロジェクトじゃ無かったからね。
   僕にはグループ全体に僕個人の音楽的な好みまで
   押し付けられるような力は無かった。

   僕はいつだって誰かに予想も付かないような様々な
   ジャンルやスタイルの音楽を楽しんできたんだ。
   僕はポップ・ミュージックの大ファンなんだよ。
    例えば、ボンド・ムーヴィー(=007シリーズ)の
    ジョン・バリーのスコアに憧れているしね。
    問題なのは、The Wedding Presentが...
    グループ内部のメンバーだけじゃなく
    そのファンからも含めてだけど、
    ハナっからギター・バンドとして認知されていたんだよね。
    だからもし僕がある日ストリング・セクションを引き連れて
    スタジオに現れてさ、
    バンドのメンバーにスパゲッティ・ウエスタンの映画音楽を
    レコーディングしようか、なんて訊いたとしたら...
    そんな事を想像してリハーサル・スタジオで
    大笑いしてたんだよね。
    実際、The Wedding Presentでもそういう
    サウンドトラックみたいな類いのものを持ち込んだ事も
    あったね。
    ("Hit Parade"シリーズで) 「シャフトのテーマ」や
    「ツイン・ピークスのテーマ」なんかをカバーしたりして...
    でもそういうのはいつだって大変だった。
    『Saturnalia』で加入したギターリストの
    Simon Cleaveは、今はCineramaのメンバーでもあるんだけど、
    皮肉な事に、最初はあんまり乗り気じゃ無かったんだよね、
    僕らがCineramaでやっている事に対しては。
    でも僕は彼がCineramaに加入したら、
    (エンニオ・)モリコーネの映画音楽に出てきそうな
    トゥワンギーなギター・スタイルが得られるんじゃないかと
    思ったんだよ。』

Q.  あなたはどちらか特定のバンドのために
   曲を取っておくんですかね?
   これはCinerama用、これはWeddoes用、とか。
   もしそうだとしたら、その基準はありますか?

D.G. 『ないよ。ただ曲を集め始める前にバンドの事を
    考える必要は実際にはある。
    特にCineramaのために曲を書き始めた時は。
    ただ、僕らの次のシングル"Wow"に関してはみんな、
    これはThe Wedding Presentの曲みたいだね、
    なんて言うんだけど。』

Q.  Cineramaのアルバム『Va Va Voom』には
   ある特定のストーリーがあったように思いました。
   あなたの恋愛は実際にあんなに惨めだったり、
   もしくはあなた自身の体験を誰か別の人間の話に
   すり替えたりしてるんでしょうか?

D.G. 『僕の書いたものにはいつだって僕自身の事が
    少しは投影されているけどね...
    まあ、曲というのはちょっとした映画の脚本みたいな
    ものと考えているんでね...で、歌う事はたぶん
    声優の吹き替えのようだし。
    そういう漠然としたものなんじゃないの?』

Q.  昨今の映画に対して何か欲求不満があります?

D.G. 『いいや。映画を見るのは大好きだよ。
    僕はレコードを分析しながら聴く事は出来ないよ。
    「おっ、良いスネアの音だな」とか
    「このバックヴォーカルは今イチ合ってないな...
     コーラスは?それから?」...
    映画を観ている時も同じで、そういうのは嫌いなんだよ。』

Q.  自分にとっては生涯のフェイヴァリット・
   コンピレーション作品である『(NME) C86』を持っているんですけど。
   私はそれを手に入れた同時期に『Watusi』も一緒に車の中で
   聴いていて、とにかく"This Boy Can Wait"
   (編注:『NME C86』収録の初期名曲)から
   "So Long, Baby" (訳注:『Watusi』収録曲)みたいな曲までの
   変貌/成長ぶりは
   極めてドラマティックだと思いました。
   The Wedding Presentはあなたの趣味志向によって
   発展していったのではないのでしょうか?

D.G. 『僕の基本的な信条の1つとして、
    一度あるタイプの音楽作品を作ったのなら、
    それはもう置き去りにして次へ進まならければならない、
    というのがあるんだ。
    僕には多くのバンドがなぜ一度レコードを作ってから...
    繰り返し繰り返しまた同じようなものを作っているのか
    理解出来ないよ。
    「おい、ちょっと待ってくれよ...僕は君が前に売り出したやつと
     同じものを買っちゃったよ」なんて言いたくなるようなさ。』

Q.  あなたのファンというのは首尾一貫していて
   確固とした考え方をもった人々が多いように思いますけど、
   何がそういう風にさせているんだと思いますか?

D.G. 『僕の基本的な信条の2番目は、人を欺かないという事さ。
    僕はいつでも自分達のファンを顧客じゃなくて
    あくまで人として接するようにしている....
    たぶん、それがそういう支持層を生んでいるんじゃないかな。』

Q.  (バンドの)SpellのTimが教えてくれたんですけど、
   どこかのパブに行った時にあなたを見かけて、
   彼の言葉を借りると、まるでBeatlesのメンバーか
   何かのような振る舞い方だったと。
   で、ファン達があなたを見つけた時にも無視するような
   感じだったと言ったんです。そういう事も信条ですか?
   高名さはファンに接する人間性をも取り除いてしまうとか?

D.G. 『そりゃあ違うよ...ただシャイなだけなんだ。
    僕は実際、人が自分の作ったものから何かを得てくれたら
    非常に幸せだし、もちろんそういうものが導いてくれる
    名声だって悪い気はしないよ...』

Q.  Cineramaの『Va Va Voom』には素晴らしい
   「ゲスト」が参加しているようですが、
    Cineramaのファン達は今後そういうのに期待をかけても
    良いんでしょうかね?

D.G. 『僕の基本的な信条の3番目として...いやいや、それは冗談だけど。
   「Va Va Voom」を作る段になって、
   その時はまだバンドは無かったから、外部からの助っ人を
   頼んだという訳で。
   それはただ僕の友達だったり、
   もしくは共同プロデューサー(=Dare Mason)の
   友達だったりね。
   特に嬉しかったのはThe DelgadosのEmma (Pollock)が
   歌ってくれた事で、
   何しろ彼女の声は感情を喚起させてくれるものがあるだろ。
   でも僕は恐れ多くて彼女には頼めなくてね...
   だから誰かに頼みに行かせたんだよね。
   まるで学生時代のようにさ...
   「私の友達が君の声が素晴らしいって褒めててさ、
    良かったら彼のアルバムで歌ってくれない?」みたいにね。』

Q.  これまで共演していない人で、
    誰か一緒にレコーディングしたい人は?

D.G. 『ここで挙げるには膨大過ぎるほどいるよ。』


The Wedding Presentはもうしばらくお休みだね

Q.  これから先The Wedding Presentとして
   アルバムを作る事はあり得るんでしょうか?

D.G. 『これに関しては本当にわからないよ。
    あのアグレッシヴなギター・サウンドが恋しいんだけども、
    わかっておいて欲しいのは僕はそういうのを努めて
    10年以上もよくやってきたんだって事、
    そして、Cineramaを始めた事は自分にとって
    新しい世界に足を踏み入れるような事だ、っていう事もね。
    今じゃCineramaの次のアルバムを作るのに
    十分な程の曲もあるから、The Wedding Presentは
    もうしばらくお休み、という事だね。』

Q.  MIDIやデジタル・レコーディングの世界を
   深く掘り下げていくのでしょうか、
   それともまた古き良き4・ピースのバンドで
   アナログ録音するつもりでしょうか?

D.G. 『皮肉にも、かつてThe Wedding Presentはそういう
    デジタルなものを1987年、ファーストLPの
    『George Best』で使ってるんだけど、
    『Va Va Voom』の録音までは2度と使う事が
    無かったんだよね。
    理由の1つとして、あのLPを作るのには
    それらの使い方を覚えるのに十分過ぎる程
    時間がかかった、という事もある。
    当初『Va Va Voom』は全て同期もの(MIDI)を
    使っていたんだけど、あまりにコンテンポラリーな
    音になりすぎちゃって、
    だからもっと多くのミュージシャンをフィーチャーした
    曲も用意しようと心掛けた。
    結局最初からやり直しで、機械のパートを
    本物の人間の演奏に入れ替えたりして、
    その成果であのアルバムはようやく生命を宿した感じだよね。
    次のCineramaのアルバムの録音をシカゴの
    Steve Albiniのスタジオで始めたばかりで、
    あそこは100%純粋なアナログ機材だからね!』

Q.  The FallのMark E.Smithと逢われた事はありますか?
   共演した事は?

D.G. 『ああ、逢った事は何度かあるけど、一番最近は
    去年ロンドンで行われたClint Boon Experienceの
    ライヴの時かな...彼がバンドにジョイントして
    イギー・ポップ(The Stooges)の
    "I wanna be your dog"のカバーを歌った、その前にね。』

Q.  Cineramaには何かカバー・ソングを期待できますか?

D.G. 『The Smithsの"London"のカヴァーはもう聴いた?
    (編注:2月に発売されたEP"Manhattan"のカップリング)
    僕は昔あのバンドが好きだったんだけど、
    今回"Manhattan"のアメリカでの発売元である
    (編注:だが結局発売されなかった)
    ミシガンのThe First Time Recordsが企画している
    The Smithsのトリビュート・アルバムに参加してくれないかと
    頼まれたもんで、
    やってみたら面白いかな、と思ったんだ。
    残念ながら、The Smithsの古いLPを聴き始めたら、
    あまりのヒドさに閉口してしまって。
    詞はいくぶんかその魅力を保っていたけど、サウンドがさ。
    なんでかつてはあんなに熱狂したんだろうな、って思って。
    で、全く別物に作り替えるのが最良の方法だろう、
    と思って、
    "London"は作りがシンプルだったからそうするには
    一番向いているな、と思えてね。
    このカヴァーは実に上手くいったと思うよ。』

Q.  今The Smithsを聴くと、なんか「嘘っぽい」感じが
   するんですよ。まるでMorrisseyは本音を言う事を
   避けていた感じで。

D.G. 『まあ、たぶんね。ある種「気取っていた」んだろうね。
    でも彼らの本当の問題はそれじゃないんだけど...』

Q.  歌詞を書く時には、やはり「誠実さ」「率直さ」が
   最高のポリシーなんでしょうか?

D.G. 『いや、最高のポリシーは自分の仕事に絶えず不満を
    抱かせるを事だ。
    だから多くの作詞家は(逃げの意味で)よくある
    同じような言葉で韻を踏んで、
    それで古典を書いたと思っている。』

Q.  あなたにとってThe Smithsの「beef」
   (アメリカ風の俗語で「不満点」とかの意と解釈)は
   なんですかね?

D.G. 『洒落じゃなくてかい?
    僕はあのプロダクションだと思うよ、本当に。
    今となっては最悪な録音に聴こえるよ...』

Q.  あの、別にここでメディア受けしそうな物議を醸し出そうって
   いうんじゃなくて、ただ最近あなたがThe Smithsを聴いて
   どう思ったか興味があったんですよ...
   でももしあなたが何か論争を巻き起こしたいんなら、
   私達は喜んで手を貸しますよ(笑)。

D.G. 『僕は博愛主義者なんでね。好戦的にはなれないよ。』
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