INTERVIEWS

07/25/'98 Cinerama Review of NME
(by Mark Beaumont)
原文はこちら

 御存知英音楽誌N.M.E.に掲載されたCINERAMAデビュー・アルバム『Va Va Voom』のレビューです。担当したのはMark Beaumont。彼はDavid Gedge関連のプレスリリースには必ずといって良いほど引用される「英国で最も一貫して素晴らしく、だがひどく過小評価されているソングライターの1人である。」というあまりに有名なフレーズを生み出したTWP/CINERAMAシンパとして知られる人で、その後2001年のリイシュー版『Bizarro』のライナーノーツも担当していますが、とにかく難解ないわゆる“N.M.E.文体”のスノッブな物言いが鼻に付く感覚が昔から僕にはあります。このレビューでもその感覚は健在ですが、当時CINERAMAがどの様に受け止められていたのかがよく分かる、資料的な価値は十分あると思いますし、多くのファン同様に、彼マークもこの時点ではよもやシネラマが6年もの長きにわたって続こうとは予想だにしていなかったという事も伝わってきます。

CINERAMA "Va Va Voom" (Cooking Vinyl)

 エンブレイスなら「君はいつだってあの場所へ帰ってくるべきだ(You should always come back to what you know)」と言うだろうか。「君の恋人を失う1,001の方法」と題された百科事典をしたため続け、炎天下の凶暴なバッファローの様に成長してきたデイヴィッド・ルイス・ゲッジ、その人に対して...。
(訳注:この下りは1998年当時流行していた英新人バンドEmbraceのヒット曲にかけたダジャレとDavidの詞世界の形容をPaul Simonの往年のヒット曲"50 ways to leave your lover"を文字って表したもの)

 ザ・ウェディング・プレゼント印のチェィンソウで12年にも渡って感情的な苦悩を強烈な陰影と共に刻み込んで周囲から賞賛されてきた我らがDavidは、彼のガールフレンド、サリー・マーレルと共にシネラマと名付けられた無名のサイド・プロジェクトに着手し、新たな牧草地と音海と最新兵器を求める旅に出た。

「こんなくだらない現実からなるだけ遠ざからなければ...」ゲッジは'Ears'で泣きじゃくる。彼は自分が思いを寄せる誰かの彼女があの野郎と行為の最中にあって、でも自分のやっている事(部屋の壁に耳をそばだててその声に聞き入っている)はどう見たって犯罪だ、という事を告白する。
 このアルバムでの彼のギターはウェディング・プレゼント特有の鋭い鋼鉄の鎧を脱ぎ捨て、涼しげなオーケストラに清められ、奇妙なフルートソロと共に更にメロウな佇まいへと取って替わられた。そのサウンドは、実際カーディガンズとかザ・デルガドズとかフェアグランド・アトラクションの中間に鎮座ましましている。その足元には木琴の絨毯だ。嘘だろ?いや、これがマジなんだって。

 ウェディング・プレゼントのファンに言っておくけど、かわいらしいバラード"Hate"でKing GrumpがTinderstickyを演っているみたいな雰囲気になったり、"Dance, Girl, Dance"で失恋したKenickieみたいにジャングリーな気分になったり、またはサビを唄っちゃったりするのは全く冒涜的行為だ。結局ウェディング・プレゼント的にアピールするのは、鯨が半狂乱で交尾しているかのごとき爆裂音によって君の奥底にある煩悩が鎮められる様な要素だろう。しかしこの新しい「成熟した」「破綻のない」「クソみたいなヒットレコードを売りたい事が明け透けな」やり口はこの作品に大きく貢献している。
何しろ、言葉が良く聞き取れるから。
きっと燃え盛るガスバーナーの助けを借りずにこれらのゴージャスな楽曲から見つけだす事が出来るはずだ。そして君のママは君を家から放り出そうと怒鳴り散らさずにすむだろう。君が32歳だろうがいくつだろうが...。

 いずれにせよデイヴ、すぐにでも「あの場所へ」戻ってきてくれよ。まあそれまでは、僕らはこの濁りのない、甘美な水の中へと幸せな気持ちで沈み込む事にしよう。(7/10)

△TOP
←戻る
TWP-CINERAMA[dbjp] is not responsible for the content of external sites.
© TWP-CINERAMA[dbjp] All rights reserved by Yoshiaki Nonaka except where noted.